心がはずむような日も、涙で包まれてしまう日も、やっぱり生かされている大切な一日。


by soratoumihouse

豊かさ故の悲しみ

いつものようにデイサービス(午後は日中一時支援)から、海が夕方帰ってきました。

インターホンに映った海と、声が若干元気がないようにも感じました。

「おかえり~」とドアを開け、入ってきた海は、やっぱり元気がないようにも

見えたし、いや、平気かな?という気も一瞬しました。

でも、とりあえず大丈夫そうなので、先生とお別れしてリビングに行きました。


海が、デイサービスの先生が書いてくれる連絡帳を取りだし、

私に渡しました。

連絡帳を読んで・・・・凍りつきました。

連絡帳には、海が棒の様な人が赤いクレヨンで塗られている絵を描き、

キャッキャッと笑いながら「血だらけ~」と言っていたというのです。


スタッフの先生は、ゆっくり丁寧に「いつもの素敵な絵の方が好きだよ」と

お話して下さったそうです。

多分、スタッフの先生方もショックで、良くないということも教えてくださった

のだと思います。それで海は、お母さんに怒られるかもしれないと思い、

言わないでと先生に伝えたそうです。


けれど、とてもショッキングな出来事なので、連絡帳に書いてくださったのです。

書いて下さって、本当に感謝しています。

もし、書いてくださらなければ、私は今日、海と話すことが出来ませんでした。



どう、海に切りだすべきかとても悩みましたが、やはり、絵を再現してもらおう。

そう思いました。

もちろん、デイサービスの所で書いたものとは同じにならないと思いますが、

私は知らなくてはならないと思ったのです。


海に、「海、きょうさ、○○○(事業所の名前)で、~~~な絵を描いたの?

お母さん、絶対怒らないよ。だから安心してね。大丈夫だよ。」と笑顔で聞きました。

海は「うん」と頷きました。

「お母さんに、どんな絵だったか教えて欲しいの。ペンでいいから描いてみてくれる?」

すると、海はすこし不安そうな表情を浮かべていましたが、一枚の紙に

描いてくれました。(事業所さんでは、一枚づつ描いたと言っていましたが、

さすがに、海の口からでは詳しくはわかりません。)

包丁で刺されて血を流している人と、ごはんを食べている人も血がいっぱい

だったそうです。


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もし、これが空だったら、気持ちを聞いた上で、本気で怒れます。

自分のした事がどんなことなのか、口だけで説明できます。


でも、海はまず、何を思い、何を考えて、どんな気持だったのかということを

聞きながら探っていくことしか出来ません。

まず、棒のような人を描くときは、何かを説明するときに海が描く人です。

海のノートの二冊目を紹介していませんでしたが、「気持ちノート」というノート

があり、海が言葉だけで伝わらないときに状況を絵で説明するのです。

こんな風に・・・。

とりあえず、描くことで本人は少し救われるようです。


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この「人」を描くときは、何か衝動に駆られている時です。

海に「どうして、こういう絵を描きたかったの?」と聞くと、

「わからないけど・・ずっと頭で考えていたの。ずっと・・・。」

「ずっと?いつから?」


「わかんないけど、○○○に行った時か・・・わからないけど・・。」

「そっか。」


「これは、どんな絵?」

「あのね、血がピュ~てなって、人がごはん食べてて、ここも血がピュ~ってなってるの。」


「これは、何かで観たのかな?」

「テレビで観ちゃったの。」


「誰と観た?一人かな?」

「わからないけど・・・空と。」


「海は、それを観てどう思ったのかな?」

「こわい。」


「怖いと思ったんだ。でも、絵を描いて笑ったのはなぜだろう?」

「おもしろいと思ったの。」


「何が?」

「あのね、血がピュ~ってなったから・・。」


「包丁で人を刺してしまったの?」

「うん。」


「そうしたら、その人どうなると思う?」

「血が出るの。嫌な気持ちする・・・。」


今、海の精一杯で考えられることを分析してみると、確かに怖いというのも事実。

でもそれ以上に、血がピュ~ってなることがおもしろいという感情の方が強かった

のでしょう。

人が死ぬとかもわからなければ、恐らく痛いだろうとい位の想像で、

された方は嫌な気持ちになるという、いつも教えられている範囲でしか

やはり考えられないのだと確信してしまいました。


「海、人を包丁で刺したらね、、、その人は死んでしまうんだよ。

死んだらね、起きて下さいって頼んでも、もう起きてはくれないの。

どんなに、ごめんなさいって謝っても、起きてはくれないの・・。」

私が泣かないように頑張っていましたが、ダメでした。

海にどうしたらわかってもらえるんだろうと思えば思うほど、上手に説明できなくて、

ポロポロ涙だけが溢れてきてしまいました。


海も、泣きながら話す私を見て、うっうっと泣きだしてしまいました。

でも、海はわかって泣いているわけではないのです。

これが、空だったら自分のしたことに気づいての涙です。

でも、海の涙は、私が泣いているから悲しくなって泣いているのです。



海はデイサービスの先生の怒られたと思っていたようで、私にそう話しました。

でも海に言いました。

「先生は怒ったんじゃないよ。海の絵と、それを見て笑っている海にとても

悲しかったんだよ。」

「海、なんかドキドキしちゃう(次に先生方に会うことが)」

「大丈夫。先生は、海のこと嫌いになったりしないよ。海が大好きだよ。

でも、海が描いた絵は、とても悲しくて苦しい絵だから、もう描いてほしくないな

って思っているよ。」

「うん・・・。」


「今日、お話したことは、とても難しいね。でも、人を包丁で刺すことは

いいことかな、悪いことかな?」

「悪いこと」


「人を包丁で刺してしまったら、その人はどうなってしまうのかな?」

「もう起きないの。起きてって言っても起きないの。死んじゃう。」

「そうだね。」


「血がピュ~て出るのは、おもしろい事?悲しい事?」

「悲しいこと」


「海が描いた絵は、怖い絵?それとも楽しい絵?」

「怖い絵・・。」


「怖い絵は、人が観たらどんな気持ちがする?」

「悲しい気持ち。」


「お母さんも悲しい気持ちがしたの。でも、海はわからなかったんだもんね。

でも、今日こうして海とお話できて良かった。海がわかってくれて嬉しいの。

だから、海は先生に言わないでって言ったかもしれないけど、お母さんは

○○○の先生が連絡帳で教えてくれて、ありがとうって思ってるんだよ。」


そう伝えて、終わりにしました。

海に限らず、この子達は、どう感情を表現したらいいのかわからなかったり、

こういう場面では、どういう感情になるとかのイメージをすることが苦手です。

海も、今日のような絵を描いて笑っているということに、全く罪悪感なんて

なかったと思います。

なので、どうして今そこで笑っているの?という場面で笑っていたり、

急に何かの鮮明な場面を思いだして、セリフを言ってしまったり、

一つ、一つその時々で気持ちや感情を教えていく他にないのです。


自分の気持ちや感情だって、どうすべきかわからないでいる海です。

そこに、相手の気持ち、それを外から見ている人の気持ちまで理解して、

今、自分はどうすべきかと判断していくことは、

何にも準備なしで、エベレストに登るようなものだと思います。


私は個人的に、ホラーとか、サスペンス等の映画やドラマが苦手です。

お子様かもしれませんが、ハッピーエンドで平和なものが大好きです。

そして、ゲーム類も全然興味がないのですが、子どもたちはやはり好きです。

でも、最近のゲームの内容は激しくて、これはゲームなのかなと思わせるほど

リアルな人間が出てきて、平気で人を殺していくような恐ろしいゲームがあります。

それだけは、空にも海にも買う事を許していません。

よく言われていますが、ゲームをリセットして、またやれば人は生き返るのかも

しれません。

でも、それを今生きている世界でもしやってしまったら、人は生き返らないのです。

そして、ゲームとはいえ、人を次々殺していくことに快感なんて味わってほしく

ありません。

テレビも気をつけないと、再現VTRみたいなもので、リアルに怖い場面を

平気で流したりします。

空にも、海は他の人より強烈な映像が残ってしまうから、怖そうなのは

海がいるときは特に気をつけるように言っているのですが、

(私も張り込んでいる訳にもいきませんから)難しいですね。


そんな訳で、子どもがいるときにには、ほとんど怖い番組は観ていなくても、

ほんの僅かな時間でも慣れていないのもあって、海には強烈な印象として

残ったのでしょう。



時代と共に、どんどん豊かになり、だいたいの物はお金で買う事が出来て、

欲しくない情報までが、大人子ども問わずに飛び込んできてしまいます。

豊かなことは、素敵なことでもありますが、豊かさ故に、出てきてしまう悲しみを

感じずにはいられません。

欲深さが生み出した人間の世界ならではの悲しみだと思います。



発達障害のある人が、犯罪を犯してしまったという事件もあります。

障害があるから人を傷つけてもいいのかといえば違います。

でも、海を育てている私は、そういう事件を耳にするたびに苦しいのです。

海も人ごとではありません。

ただただ、ひたすら伝えて伝えて、気持ちを、感情を、伝えていくしかないのです。



Mr.Children唄に「タガタメ」という唄があります。

「タガタメ」桜井 和寿 詩/曲

「・・・途中から

子供らを被害者に 加害者にもせずに

この街で暮らすため まず何をすべきだろう?

でももしも被害者に 加害者になったとき

出来ることと言えば

涙を流し 瞼を腫らし

祈るほかにないのか?


・・・途中から

子供らを被害者に 加害者にもせずに

この街で暮らすため まず何をすべきだろう?

でももし被害者に 加害者になったとき

かろうじて出来ることは

相変わらず 性懲りもなく

愛すこと以外にない


・・・続く」


まず、自分がいるこの街で、子どもらを想って出来ることを、一人一人が

考えてみることが大切なのかもしれません。


今日の海の絵の出来事は、私にとっても衝撃で、とても悲しかった。

でも、今日の事を受けて、海のわかっていない部分を知ることができました。

話はわかっているようでも、やっぱり今日も、海の困難と今を思い知らされました。

そのおかげで、大切なことを伝えることが出来ました。

デイサービスのお世話になっている先生方の協力があったからです。

同じ地域の中で共に涙を流し、祈り、愛してもらいながら、海を育ててもらっていること。

そういう人達のなかで、海が生きていけることを幸せに思います。


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Commented by メイプルツリー at 2012-03-07 17:20 x
ゆっくり読ませてもらったよ。

びっくりしたよね、海ママ。
でもその後の、対話がとってもすばらしくて
うん、うん・・・と、頷きながら読んでったよ。

子供によって、起きていること、見ていることの
ありのままを受け入れる尺度は違うから
大人の導きは大きな影響力を与えるよね本当・・・。

反面、世の中の汚い部分も将来的に知っていく必要もあるから
人を育てていくって本当に奥が深いね。

ほんと一歩一歩だね!
お互いがんばろうね!!!
Commented by うーわぁ at 2012-03-07 19:06 x
いまの世の中本当に進み過ぎていたり物が溢れ過ぎるが故に、こどもの環境にとって良くないこと刺激過ぎるところが本当にありますね。昨日の海くんのことには本当にビックリしたことでしょう。映像がストレートにはいってきたのでしょうね。海くんにそのことをどう伝えようか大変悩まれたと思います。一つずつユックリと説明したり気持ちを考えたりする姿だったと思います。分かってほしいがゆえに親が感情が溢れ涙してしまう気持ちよくわかります。一つずつまだまだ色々わからない子供達に大切なことをどぅ伝えるか私にも課題です。
Commented by soratoumihouse at 2012-03-07 22:03
メイプルツリーさんへ
本当に、メイプルツリーさんのいう通りだと思う。
私達親は、子どもは出来るだけ良い環境の中で育てたいと思っても、
今の時代の中で、汚い現実にも向き合っていかなきゃならないんだよね。
自閉症のことも昔に比べたら、色々とわかってきて、理解をしてもらえるようになってきたことは幸せだけど、その反面、何でも目に飛び込んでしまうほど情報が飛び交う中で、どんどん残酷な世界がゲーム感覚で広がっていて、その中で生きる、生きづらさも出てきているんだよね。
昔も、今も、これからも質の違う「生きづらさ」が存在するんだろうね。

一歩一歩、一つ一つ向き合いながら、海の心を探りながら人の気持ちや
感情を伝えていきたいなって思ってます。

親になって学ぶことは沢山あるね。一緒に成長していきたいね^^。
Commented by soratoumihouse at 2012-03-07 22:17
うーわぁさんへ
私達の親の世代は、きっと私達子ども達の取り巻く環境に、時代の変化を感じて悩んだりしてきたんだよね。
だから、海達が大人になる頃には、さらに驚く進歩もあり、それに反した恐ろしい刺激の世界があるのかもしれないね。

そんな時代が待っているかもしれないから、今、親の私達が、逃げずに向き合っていかないといけないな~と感じました。

こんな事で悩むほど海は成長したんだと、悲しむだけでなく、その成長を喜ぶことも忘れてはならないんだなって思ったよ。

悩みながら、ゆっくり子育てをしていこうね。
by soratoumihouse | 2012-03-06 23:33 | 海のこと | Comments(4)